一匹狼くん、 拾いました。弐
「仁、結賀、その……父さんのとこ行く前に、付き合って欲しいとこがあって」
洗い物が終わると、俺はそう控えめな声で言った。
「ん、どこ?」
仁は不思議そうに首を傾げた。
「……虐待されてた時に俺が暮らしてた家に一緒に来て欲しい。たぶんそこに昔の葵の写真があるから」
虐待されてた時に俺が暮らしてたあの家は、今は露麻の家になっている。
どうしてそうなっているのか俺は知らない。単に広い家だから露麻が好きで買いとったのか、それとも父さんが戻ってきた時のために露麻に買い取るようにいったのか。はたまた他に理由があるのか。俺はそれを知らないし、知りたくもない。
「いいけど……ミカ俺らを家に入れるの懸念してなかったっけ?」
「うんまぁそうなんだけど、もう別にそれを気にする必要はないかと思って」
「いいこと言うじゃん。上出来」
俺の肩をこづいて、仁は笑った。
「じゃ、ミカの家にいくか」
少しだけ口角を上げて結賀は言う。
「……うん」
小さな声で俺は頷いた。