一匹狼くん、 拾いました。弐

「こんなの見なくていい」

 仁は俺の手からアルバムを奪いとって、ゴミ箱に投げた。

 結賀が棚からもう一つアルバムをとって、ページをめくる。
 また、バツ印が書かれた子供の写真が出てきた。結賀は仁と同じように、アルバムをゴミ箱に捨てた。

「……露麻、親父は俺とお前がいる孤児院の他に、一体いくつの孤児院を回ったんだ……?」

 声が震えた。

「分かりません。ただ、旦那様は孤児院で初めて私と会った時、クマを作っておられました。……もしそれが、寝る間も惜しんで子供を選別していたからだとしたら、そこにあるアルバムの大多数が、子供の選別をした時のものかもしれません」

 アルバムは仁と結賀が捨てたのの他に、八冊ほどあった。

 俺は棚からアルバムを出してはめくり、出してはめくった。

「ミカ、やんなくていい!葵の写真を探すためだけにこんなことしなくていいから!」

 仁が俺の腕を掴んで言う。俺は仁の腕を振りほどいた。

「うるせえっ!」

 どのアルバムをめくってもバツ印の子供の写真が出てきた。

 アルバムをめくるたびに親父の異常性を実感する。……頭が可笑しくなりそうだ。

「はあっ、はぁっ」

 冷や汗が滲んで、瞳から涙が流れる。

 最後の一冊をめくったら、やっと家族写真と思わしきものが出てきた。

「……葵」

 アルバムの一ページ目には、葵と思わしき赤ん坊を抱えた母さんの写真があった。

 その次のページには公園の滑り台に乗ってる四歳くらいの葵の写真があった。幼いけど、よく見ると葵の面影がある。

 その写真にも、バツ印がついていた。

 ……なんなんだこれ。

 もう嫌だ。

 頭が混乱して、身体から力が抜ける。

 アルバムが、手から滑り落ちた。
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