一匹狼くん、 拾いました。弐

「「ミカ、大丈夫か?」」

 結賀と仁が俺の顔を覗き込む。

「なぁ仁、結賀、……俺は顔しか価値がないのか?」

 結賀と仁がこの言葉を否定しないわけがない。

 俺の価値が顔だけなわけがない。そうわかっていても、聞かずにはいられなかった。

「は? 何言ってんだよ、そんなわけねぇだろ」

 俺の両肩に手当てて仁は言う。
 涙が頬を伝う。
 今朝、仁が言った言葉を思い出す。
『多分俺、ずっと母親にああいうこと言われたかったんだなって』
 ……俺もそうだ。俺も父さんに、そんなわけないだろって、『お前の価値が顔だけなわけないだろ』って言われたかった。

 ちゃんと大事にされたかった。

 毎日ご飯を笑って食べれる環境が欲しかった。学校から帰ってきてただいまって言ったら、笑顔で出迎えて欲しかった。
 
 俺の価値を否定しないで欲しかった。

 ゴミ以下なんて言わないで欲しかった。

「……俺、父さんにそう言われたかった」

 ボロボロと涙を流しながら言う。

 こんなことを言ったって結賀と仁が困るだけだとわかっていても、言わずにはいられなかった。
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