森の奥のパティシエール
「ヘンゼル兄さん!この人すごく困ってそうだったの!お母さんには内緒にしておけばいいでしょ?」

鋭い目をするヘンゼルにグレーテルが必死で説得する。しばらくするとヘンゼルはため息をつき、「仕方ないな……。おい、あんたはさっさと席に座れ」と男性に言う。

「は、はい……」

「フフッ、よかった!お客様はこちらにどうぞ」

ヘンゼルの冷たい声にびくりと男性は肩を震わせるが、グレーテルはフニャリと笑って席に案内してくれた。

温かな紅茶を出され、男性はヘンゼルとグレーテルに見つめられる。ヘンゼルは男性を睨むように、グレーテルはわくわくしたような目だ。

「それで、あんたは何を悩んでるんだ?」

ヘンゼルが訊ね、男性は「えっ?」と首を傾げる。確かに悩みはあるが、スイーツ店で話す必要があるのか理解できない。

「グレーテル、ちゃんと説明してなかったのかよ」

「ご、ごめんなさい。今から説明する」

グレーテルはそう言い、男性にこのスイーツ店のことを話し始める。それは男性の耳を疑ってしまうものだった。
< 3 / 9 >

この作品をシェア

pagetop