森の奥のパティシエール
「ここは魔法のスイーツ店。あなたの悩みを魔法のかけられたスイーツで解決します!もちろん代償はもらうけどね」

「代償ってお金?」

「お金じゃないよ。何を代償にされるかはその人の悩み次第、かな」

無邪気に笑うグレーテルに、なぜか男性は恐怖を感じた。ヘンゼルを見つめるとヘンゼルがため息をついて口を開く。

「ここに来る奴は善人ばかりじゃない。悪人だって大勢いる。俺たちは願いを叶える代わりに願いを叶えた人間から何かをもらうんだ。例えば、弱い心や悲しみとかな。でも富や名声、美しい容姿や体の一部を失った者もいる」

二人はまるで男性を試すかのように見つめている。どうやら嘘ではないようだ。男性は覚悟を決め、話すことにした。

「……俺の願いを叶えてほしい。仕事が忙しすぎて家族と過ごす時間がない。もっと家族のことも大切にしたいんだ」

男性が話し終わると、ヘンゼルとグレーテルは顔を見合わせる。そして「ならあのドルチェで叶えましょう!!」と同時に言った。
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