小説家の妻が溺愛している夫をネタにしてるのがバレまして…
「よっ読んだんですか!?」


2人きりで食事に出かけた日。
初めて視線を交えた彼女は驚いた顔をしていて、その反応が異常で面白かった。


「はい。凄く心温まる内容で感動して泣いてしまいました」

「麻耶ちゃん…勝手に……あぁ…」

「そんなに恥ずかしいんですか?」

「脳内見られてるみたいで…今だに慣れなくて…」


考えていることが全て表情に出るところが、また何とも可愛らしい。


「……でも、沖崎さんにそう言っていただけて、また一から頑張ろうと思いました」


文章通りの人柄だな。

笑顔は柔らかくて、雰囲気もあたたかくて。

優しい声音に、たまに見せる恥ずかしそうな表情が唆られる。


(ドSスイッチ入りそう)


もっと自分を見せて欲しい。
もっと自分を知って欲しい。
距離を詰めたい。


「……敬語、なしにして話しませんか? 一応、同い年だし。」

「っ…はい! あ…えっと……うん…」


これが演技だったら恐ろしいくらいにウブ。


「……沖崎さんは優しい人ですね」

「それを言うなら藍澤さんも。…………敬語、抜けてないよ」

「あっ………タメ口…難しい…」


入りやすい女性が好きそうなカフェで摂った食事を舌鼓打ちながら食べる姿。
慣れてきたのか頻度が増えた笑顔。


脳裏に焼き付いて離れなかった。


一緒にいて楽しいって思ったりなんかして。




好きかも、なんて思ったりして。




告白をするときはものすごく緊張した。




「…好きです。……付き合ってください。」



断られるわけがなかった。詩乃ちゃんはわかりやすくて、思っていることが全部表に出て。
成功率100%の告白でも、ものすごく動機が激しかった。



「私も沖崎さんのこと…好きです…。……なので………その…よろしくお願いします…」



これが僕と詩乃ちゃんが付き合うまでの流れ。
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