小説家の妻が溺愛している夫をネタにしてるのがバレまして…
出会って、早7回目の食事に出かけた日。
「……詩乃ちゃん、最近僕の顔を見ないよね」
「っ……そんなことないよ…!」
「……僕、気にさわるようなことした?」
「してない」
私は相当わかりやすかったと思う。
郁人くんを意識し始めてから小説に恋愛要素が増えた。表現の幅も広がってリアリティと話の面白み、深みが増したことは自負している。
郁人くんは私の小説を毎回発売されるたびに、小説の表紙の写真と『これから読む!』という報告の連絡が送られてくるから変化に気づかれているかもしれない。
「……僕、自惚れてるかも。」
頬を赤くしながら郁人くんはそう言った。
「…詩乃ちゃんの…一番になれた…?」
「……………うん……」
その日は星が綺麗な日。
街灯の明かりがない、暗い場所に車を停めて…。
離れたくなくて、ずっと一緒に居たくて。
「……あのさ、聞いて欲しいんだけど…」
「うん」
「…好きです。……付き合ってください。」
断るわけがなかった。郁人くんは優しくて、私にとって大好きな人で。
ものすごく、おかしいくらいに動機が激しかった。
「私も沖崎さんのこと…好きです…。……なので………その…よろしくお願いします…」
これが私と郁人くんが付き合うまでの流れ。
懐かしいな。
大切な思い出を胸にしまうと、気持ちよさそうにすやすやと隣で寝息を立てている郁人くんを見つめた。
「………愛してるよ。郁人くん」
好きになってくれてありがとう。
これからもよろしくね。
心の中で伝えると、疲れから来ている眠気に身を委ねた。