小説家の妻が溺愛している夫をネタにしてるのがバレまして…
甘い中毒症状
郁人side
「はぁあぁあぁあぁぁぁぁ…」
「………すごいため息だね…」
最近の詩乃ちゃんはお疲れモードだ。
聞くところによると、仕事が行き詰まっているらしい。
(今度書くって言ってたファンタジー小説かな…? それとも官能小説?)
前者の方が確率高いと踏んだ僕は、とりあえずいつも通り詩乃ちゃんの大好きなホットミルクと自分の分を用意して机の上に置いた。
マグカップを買ったらキャンペーンで付いてきた温かい色のコースターを敷いて、その上にお揃いのマグカップを置く。
詩乃ちゃんは甘いものが好きだから、詩乃ちゃんの分のホットミルクには少しだけ砂糖を入れた。
「リフレッシュ……というか休憩ってことで、一緒に飲もう?」
実は今日、僕は仕事を持ち帰ってきた。企画書の作成…勤務外労働だから少し気が引けるけど、少しやればすぐに終わる分量しかない。
「郁人くんも忙しいのに…ありがとう」
その労いの言葉と、
「ん……美味しい〜」
和んだ詩乃ちゃんの顔が見れれば、
「………充分だよ」
「ん?」
「こっちの話」
相当、僕は詩乃ちゃんを溺愛してるみたい。
「僕が手伝えることってある?」
甘やかすのは違うかもしれないけど目の下のクマとか見る限り、かなり疲れてることは間違いなかった。
だから、何か手伝えれば良いなぁなんて思うんだけど…。
きっと返答は『無い』と言われるだけだろうと推測をしながら、ホットミルクを口にした。
そんな僕に詩乃ちゃんは推測とは正反対な返答を返してくる。
「……….ある…」
詩乃ちゃんの真っ赤な表情から読み取ろうと試みる。
そして僕は察した。
(………上手くいってないの官能の方か)
と、すぐに自分に何が求められてるかがわかった。
「……仕事終わらせてくる。」
それだけ伝えて僕は自室へ戻り、いつも通り愛しい妻のために急ピッチでタスクを片付けることとなった。