小説家の妻が溺愛している夫をネタにしてるのがバレまして…
「詩乃ちゃんのこと、たくさん虐めればいいんでしょ?」
「うぅ……」
愛しい妻が何を求めているのか、仕草ひとつひとつで察知できるのが僕の『特殊スキル』。
…なんて言い方したら詩乃ちゃんのファンタジー小説に感化されすぎてるなぁなんて思うけど…。
「虐めるというか…!その…!」
「?」
「………キス……して欲しい…」
詩乃ちゃんの上目遣いをもろに受け、僕は手を引いて妻をベッドへと誘った。
「……行き詰まってるのキスシーンなの?」
「………なんか愛情溢れる感じで…意地悪なキス……言葉ひとつひとつから愛し合ってるって雰囲気を出したくて…」
(愛情たっぷりと…意地悪なキス……かぁ)
頭の中で考えるよりも実践してみようと考える妻の相手はもちろん僕なわけで。
(……このキスも小説の題材にされるのか)
思う存分、くたくたになるくらい可愛がってあげよう。
《チュッ》
手始めに触れるだけの優しいキスを頬に。
《チュ…》
次にこめかみに。
そしてその次は目蓋にキスをした。
詩乃ちゃんは一回一回のキスに、ピクピクと反応している。
それが堪らなく可愛い。
「……口は…?」
「まだダメ」
キザっぽく人差し指を唇に当てて、詩乃ちゃんと目を合わせた。
「……目、開けてて」
「っ…むっむり…」
「なるべく頑張って?」
相当僕の頬は緩んでいると思う。
精一杯頑張る詩乃ちゃんの表情がおいしいと感じているから…。
顎に口付けると詩乃ちゃんは肩をビクッと震わせる。
その身震いも、全部が僕の加虐心を掻き立てた。
わざと口の近くにキスを落とすと、『唇にして』という催促の視線を受ける。
けれど、そんな要望通りに僕は返すわけがなく…。
耳たぶを甘噛みした。
「……っ!」
「ふっ…良い反応…」
真っ赤な頬にリップ音を立ててキスをして、今度は耳たぶを舌で舐め上げる。
「んっ…」
「きもちぃ?」
「……きっ訊かないで…」
そろそろかな、と思った僕は、今度は詩乃ちゃんの唇に舌を這わせた。
やっとの唇へのキスに喜んでいる様子の詩乃ちゃん。だけど突然舌で襲ったからか驚いた表情も浮かべていて。
「目…閉じないで。真っ直ぐに僕のこと見て…。」
「っ…は…ぃ………」
目を合わせたまま、無我夢中に求めるように唇を重ね続ける。
「はぁ…んっ………」
とろけた顔になっていく様はグッときて、異常なほどの欲求がふつふつと湧き上がってきた。
舌先で口蓋を突いたり、頬の裏の粘膜をクチュクチュ音を立てながら刺激する。舌同士を絡めると、詩乃ちゃんの好きな側面をたっぷりと責め立てた。
「待っ…」
「ん…苦しい…?」
「うん…」
「…耐えて。………止まんない…。」
より一層激しく続けたことは言うまでもない。
酸素を求めて開ける口内はあまりに無防備で、溢れ出す愛情を注ぐようにキスを繰り返した。
「……意地悪で愛情たっぷりなキス…いかがでしたか?」
「……唇…ヒリヒリする…」
「でも悦んでたじゃん」
「……うん…。気持ち良かった…」
素直なところも可愛い。
僕は重度の詩乃ちゃん中毒者だ。