小説家の妻が溺愛している夫をネタにしてるのがバレまして…
「ただいま」
「おかえり!」
仕事を終えて帰ってきた郁人くんを出迎えるのと、ほぼ同じタイミングで宅配便は届いた。
「ダンボール…。母さんから?」
「うん! トマトとナス送ったって昼間電話もらったんだ〜」
楽しみにしていた野菜。
今日の夜はトマトとナスをふんだんに使った料理を食べよう。
そう思いつつ、ワクワクしながらダンボールを固く封じているガムテープに手をかけた。
「ナス…カレーに入れて食べたいなぁ。トマトは…」
「あっ!私アレ食べたい!トマトの肉詰め!この間テレビで食べてて美味しそうで…」
「レシピ検索して作ってみるよ」
胸に期待が膨らむ中、ダンボールを開封すると…。
誰しもがそんなものを入ってるだなんて想像つかないだろう。
告げられた通りの立派なナスとトマト。
そして…。
「うなぎ、玉ねぎ、ニラ………と…」
「精力剤……?」
「あ、精力剤……かぁ…。………え!?」
私の知っている通りのものだろうか。
男性のアレを勃たせるために飲む…あの勃起剤とか滋養強壮剤とか言われている……あの…。
「ぅわ……」
一気に恥ずかしくなって、私はそっとダンボールを閉じた。
「……気にしなくていいよ。母さんの孫の顔が見たいアピールだと思うし…」
苦笑いをして、郁人くんはダンボールを抱えて立ち上がった。リビングの方へと進んでいく夫の背中を見ながら、火照った頬を覚ますようにパタパタと手をうちわのように動かす。
いつかは子供が欲しいと思っていた。
でも、それがいつなのかは考えたことがなくて………というか考えることを忘れてて。
(郁人くんは…どう思ってるんだろう…)
結婚して、今日で約8ヶ月ほど。
「………」
一人で考えるのには、かなり重要なことすぎて…。
決めきれなかった。