受話器に愛をささやいて
「カテキョの時間以外はほとんど俯いてるし、あんまり目も合わせてくれないし。なんて言うか、俺嫌われてんのかなって……地味に傷付く時がある」

「……そっ、」

 そんな事はない、と。

 ハッキリ否定しようとした時、不意にシャッターを切られたかのような光源を感じ、ビクッと肩が揺れた。

 その刹那、ドォンと遠くで重い地響きがして、私は反射的に耳を塞いだ。

「ひゃッ…!」

 全身の力を根こそぎ奪っていくような轟音に怖気を募らせる。

 続いて再び空をジグザグの稲光が裂き、ドドン、と音を響かせ威嚇してくる。

「いやぁあ…ッ」

 私は涙目でギュッと目を瞑った。

 子供の頃から、雷は天敵で大の苦手だ。

「だ、大丈夫? 栞里ちゃん……」

 賢人くんの存在をすぐそばに感じて、私は怯えから彼にしがみついた。

「ーーっし」

「ごめ、お願いだからちょっとだけ……、このままでいさせて……っ」

 彼の胸を借りて身を縮こませ、雷が鳴り止むのをただひたすらに待った。

 賢人くんは何も言わなかった。

 おそらく棒立ちしたままで、私を見下ろしていたと思う。
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