受話器に愛をささやいて
 私は何も言えずに、重いため息を地面に落とした。

 ーー恥ずかしくて、消えちゃいたい。

 羞恥の熱とともに目頭が熱くなり、じわっと涙が滲んだ。

「栞里ちゃん、目ぇ閉じて?」

「……え?」

 彼からスマホを受け取り、急にそんなお願いをされる。

 私はわけが分からなくて、首を傾げるのだが。

「ね、お願い。さっきのお返しだと思ってさ」

 そう言って柏手を作られるので、仕方なくまぶたを伏せた。

 滲んだ涙が頬を伝うのと同時に、温かな息遣いを肌で感じた。

 突如として、唇にふにっと柔らかいものを押しつけられて目を開ける。

 彼にキスされたと気付いて、私は咄嗟に身を引いた。

 賢人くんは瞳を三日月型に細め、意地悪そうに笑って言った。

「ね、知ってる? 恋愛ジンクスで結ばれたカップルがここでキスすると永遠に結ばれるんだよ?」

「……え。そんなの、初めて聞いた」

「そりゃそうでしょ。今俺が作ったんだから」

 ーーえ……。

「栞里ちゃんの名前、相崎(あいざき) 栞里(しおり)を数字変換すると、"1212252"、だよね?」

 ーーそれってつまり……。

< 12 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop