俺様パイロットに独り占めされました
彼らがポジションに着いたからには、飛行機は間もなくここに到着する。
瞬時に緊張が走って、私はゴクリと喉を鳴らした。


サッと目線を上げると、大きなジャンボ機の両翼に取り付けられた、赤と緑のナビゲーションライトが、窓越しに確認できる。
眼下の地面では、作業着姿の整備士も数人、大きく手を振って誘導していた。


マーシャラーが両手をまっすぐ横に伸ばし、旗を小刻みに動かしている。
それに従って、巨大な飛行機がぶれることなくまっすぐ進んでくる。


階上の到着ロビーから見ていると、ヌッと突き出しているように見える、飛行機の鼻先。
そこに位置するコックピットも、もう視認できる。


操縦席に着く、二人の人影。
私から見て、向かって左が副操縦士。右が機長。
久遠さんだ……と思うだけで、心臓が竦み上がった。


マーシャラーが、両腕を天高く突き上げる。
『止まれ』という合図に、飛行機はピタリと静止した。


飛行機のエンジンが完全に停止すると、地上の整備士たちが、わらわらと寄っていく。
車輪が動かないよう、しっかりチョーク留めを施す。


マーシャラーとコックピットの二人が、背筋を伸ばして敬礼で挨拶。
この半月で、業務中は日常的になった光景だけど、飛行機好きの私としては、何度見ても胸が熱くなる。
いつもなら、お呼びじゃないとわかっていて、私まで一緒に敬礼してしまうところだけど、今はそれどころじゃない。
< 10 / 20 >

この作品をシェア

pagetop