俺様パイロットに独り占めされました
CAが開けた乗降口に、ボーディングブリッジが接続される。
降機準備が整うと、やがて最初の乗客が姿を現した。
私も持ち場について、お出迎えをする。


「お帰りなさい、お気をつけて」


この後に待っている、お咎めへの恐怖でいっぱいの心とは裏腹に、なんとか笑みを浮かべて、ゲートを過ぎていく乗客を見送る。
乗客がすべて降機を終えたら、次は乗務員たちだ。


とうとう迎えてしまった、この瞬間――。
私は妙な武者震いをして、久遠さんが降りてくるのを待った。
ところが……。


「あの、すみません」


一度過ぎ去っていった乗客が、こちらに戻ってきた。


「っ、はい。なんでしょう?」


乗客に対しては無防備になっていて、一瞬ギクッとしてしまった。
慌てて笑顔を繕って応じる。


「この後、福岡行きに乗り継ぎなんですが、どこに行けば……」


乗り継ぎ便のゲートへの行き方がわからない様子で、辺りをきょろきょろしている。


「あ、はい。でしたら、ご案内いたします」


私はグランドスタッフ。
乗客の案内は、私の仕事だ。


機内からは、CAも数人、姿を現していた。
せっかく待ってたのに、ご案内してる間に久遠さんと入れ違っちゃうかな――。
私は背後を気にしながら、乗客を導いてゲートを離れた。
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