俺様パイロットに独り占めされました
乗客を福岡便の搭乗口に送り届けて戻ってくると、到着ゲートは閑散としていた。
今日、このゲートを使用するのは、さっきの札幌便が最後だ。
付近には乗客も職員の姿もなく、しんと静まり返っている。
飛行機もすでに移動していて、窓の外はぽっかりと口を開けたような、闇に包まれていた。


「……はあ」


お咎めを受ける覚悟が萎えて、私は声に出して溜め息をつき、肩を落とした。
いつも通り、いつ来るかとビクビクしながら、久遠さんの呼び出しを待つしかないか――。
そう諦めて、次の持ち場に向かおうとして、引き返しかけた時。


「……?」


なにやら、ゲートの隅っこの方から、声が聞こえた。
広いロビーからも死角になる、太い柱の陰。
辺りを憚る声は小さいけど、時々感情的に上擦る感じで、不穏な空気が漂ってくる。


なにか、トラブルでも起きている?
私は、恐る恐る、そちらに向かって歩いていった。


なにか困っているようなら、お手伝いしないと。
近付いて行ったのは、そんな業務上の使命感からで、決して好奇心が湧いたわけではなかったけれど。


「恋人面だなんて……酷いです、久遠さんっ」


女性の詰るような声を拾って、私はギクリと足を止めた。


「私のこと、弄んでたんですか……!?」


涙混じりの細い金切り声。
そこに出てくる名前と内容に、ドキッと胸が跳ねる。
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