俺様パイロットに独り占めされました
その後、なんとかお客様を見つけて、半泣きで急かしながらゲートに着いた。
飛行機は、定刻を十分過ぎて離陸した。


焦ったけど、それほど大幅なディレイとは言えない。
ゲートの表示が、『出発済』と変わったのを見て、ホッと胸を撫で下ろしたものの……。


「搭乗者の確認は、十分すぎるほど十分しなさいって言ってるでしょ!」


102便の搭乗者確認は私が担当だったから、主任にこっ酷く怒られた。


「すみません! すみません!!」


お客様も職員も掃けた人気のないゲートで、私はペコペコ頭を下げて平謝り。
私より十三歳年上、三十九歳の女性主任が、「まったく」と腕組みをした。


「まあ、酒匂さんチェックインから異動してきて、まだ半月だし。なかなか要領が掴めないのも、仕方ないんだけどね……」


眉間に皺を刻み、難しい顔をしながらも、言葉を濁す。
そう――。
空に憧れ、並々ならぬ大志を抱きつつも、自分じゃ飛べない私は、大学卒業後、日本最大手の航空会社、日本エア航空の地上業務委託会社に就職した。
入社以来ずっと、チェックインカウンター業務に就いていたけど、半月前の辞令で、搭乗案内担当に異動したばかりだった。
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