俺様パイロットに独り占めされました
チェックインカウンターよりも飛行機に近い、搭乗ゲートでの勤務。
大好きな飛行機を間近に眺められて嬉しいものの、毎日毎日、自らのミスで走ってばかり……。


あまりに不甲斐ない自分を、穴を掘ってでも埋めてしまいたい。
しゅんと肩を落とす私に、主任は「はあ」と声に出して溜め息をついた。


「……久遠(くおん)機長。『また酒匂か!?』って、だいぶご立腹だったみたいよ」


声を潜めて脅されなくても、私は『久遠』の『く』の字を聞いただけで、ギクッとする。


「く、久遠さんが……?」


頬骨のあたりがヒクヒクするのを感じながら、引き攣った笑顔で聞き返す。
主任が、一度頷いて返してきた。


「今日、札幌一・五往復で、東京に戻ってきて勤務終了だそうだから。お咎め受ける覚悟はしておきなさいね」

「ふ、ふぁいっ……!」


言われるまでもなく覚悟はしていたけれど、『やっぱり』と絶望が走って力んでしまい、妙な返事してしまった。
主任も、『やれやれ』とでも言いたげに、額に手を当てる。


「一応聞いておくけど……酒匂さん、久遠機長と個人的な接点を作りたくて、わざとミスして目に留まろうとしてるんじゃないわよね?」


疑わしそうな目を向けられ、私はギョッと目を剥く。
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