俺様パイロットに独り占めされました
「とんでもない! そんなわけないじゃないですか……!」


今度こそ本当に泣きそうになって、誤解を解こうと、悲壮な声を張る。
「ならいいんだけど」と、主任は額から手を離した。


「久遠機長と同じチームのCAがね、そういう噂してるらしいのよ」

「っ、ええっ!?」

「目につくことして、彼に取り入ろうとしてるんじゃないかって」

「そ、そんなっ……!」


あまりの言われように、さすがに私も絶句した。


「でも、久遠機長が相手だし。実際、たった二週間で目に留まってるのは事実だから、そのくらい言われても仕方がないかしらね」


悔しいけれど、言い返す言葉もない。
私は、がっくりとこうべを垂れた。


「今後は、絶対……久遠機長の乗務の妨げにならないよう、努めます……」


と猛省しても、その気合いがむしろ空回ってる感もあるから、私の決意表明は力なく尻すぼみになった。
久遠機長……久遠優真(ゆうま)さんは、この春、まだ三十四歳の若さで機長に昇進した、航空会社史上最年少機長だ。
エリート揃いのパイロットの中でも、頭一つ抜きん出ている、エリート中のエリート。
将来有望な出世頭の上、誰もが振り返るほどの長身イケメン。
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