俺様パイロットに独り占めされました
しかも独身だから、キラッキラの美人CAたちを筆頭に、私たちグランドスタッフの女性からも人気がある。


尖るような鋭い光を湛える、切れ長の涼やかな目。
その視線になら、『全身ズタズタに刺されてもいい』とか。
怖いくらい整った顔を、『瞬きする間が惜しい。ドライアイになってでも、目を凝らしていたい』だとか。
精悍な顔立ちには、意外な肉食の香りが秘められていて、『頭からガリガリ食べられちゃいたい』とか――。
……みんな、どうかしてると思うけど。


仕事熱心な故の厳しさも、ストイックと評価されて、かえって好印象。
多分、本気で怖がってるのなんて、私くらいなものだ。


「まあ、久遠機長が戻ってくるまで、まだ時間あるし。ほら、とにかく、次の案内行きましょう」


百六十センチに届かない、やや小柄な私がしゅんと肩を落とすと、普段以上に頼りない印象が強まる。
二十六歳になっても、いまだに大学生と間違えられることもある童顔は、公然のコンプレックスだ。


「はい……」


いつの間にかハの字に下がっていた眉に、なんとかキリッと力を込める。
大きな二重目蓋の目に浮かんだ涙をグイと手の甲で擦り、低く小さな鼻をズピッと鳴らす。
一度大きく深呼吸をして、


「頑張ります」


なんとか、次の仕事に、気持ちを切り替えた。
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