俺様パイロットに独り占めされました
呼び出されるとわかっていて、いつ来るかいつ来るかとビクビクして待つよりは、いっそ自ら潔く怒られに行った方がいい。
――精神衛生的観念からも。


『ご立腹』と聞いて、お咎めも覚悟できてるんだから、もう逃げも隠れも致しませぬ。
そんな心意気を示すつもりで、同僚に持ち場を替わってもらった。


そして迎えた、午後七時。
私は久遠さんの本日最後の乗務便の着陸を待って、到着ロビーに降りた。


通常、飛行機は一日で三から五回、往復使用される。
久遠さんは東京で勤務終了だけど、乗ってきた機体はもう一度飛んで、今夜は札幌でドッグ入りだ。
たった一回、十分の遅れでも、同じ機体を使用する他のフライトスケジュールに影響を及ぼす。


そのため、私たちグランドスタッフは、飛行機が定刻通りに運航できるよう、力を尽くさなければいけない。
今、私が担当している搭乗案内業務に限らず、今までのチェックイン業務でも……飛行機に携わる他の地上職、整備士もケータラーにしても、皆、飛行機が遅れないよう、力を合わせて働いているのだ。


だから、久遠さんの厳しいお咎めも、本当は当然のことだとわかっている。
私は、ゲートで乗客を迎える準備をしながら、なんとか気持ちを奮い立たせようとした。
< 8 / 20 >

この作品をシェア

pagetop