Tear Song〜君のために〜
「風邪引くよ……」

あたしは泣きながら笑ってアイツに毛布をかけてあげる。結婚式に風邪引いてしまいましたとかあり得ないからね。

もう大丈夫。この胸の痛みにも慣れたから……。



二人の結婚式の日は、人魚姫が泡になってしまった海のように綺麗な青だった。

ウェディングドレスを着た結婚相手の隣でアイツはタキシードを着て微笑んでいる。誓いの言葉を言って、キスをして……。ヤダ、覚悟してたのに泣いちゃいそう。

式は順調に進み、いよいよ披露宴がやってきた。あたしの大きな出番だ。二人をきちんと祝福しないと……。

あたしは涙を拭い、覚悟を決める。次の恋ではきちんと素直に想いを吐き出すんだと自分自身に言いながら。

「それでは、釜谷美海(かまやみみ)さんによる新郎新婦に贈る歌。「泡になる前に君を」です」

アイツは嬉しそうに拍手をする。あたしは切なげに笑って「幸せになりなよ」と心の中で呟いた。
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