純白のダンス
「恥ずかし〜……。俺は人より下手だから練習してたのに……」

「その練習のおかげでこうして大きな舞台に立てるんだろ。立派だ」

志帆がふわりと笑う。今日初めて笑ってくれた。海斗の胸が高鳴る。

志帆はバレエ教室の仲間と群れたりしない。いつも練習していて、周りから遠い場所にいるような気がした。でも今、志帆は海斗の一番近い場所にいてくれているような気がする。

「白馬さんも笑うんだ」

海斗がそう言うと、「失礼だな。私だって人間だぞ」と志帆は結んでいた髪のゴムを外した。パサリと明るく長い髪が落ちてくる。甘いシャンプーの香りがした。

「この匂いって××のシャンプーだよね。クラスの女子に人気なんだ。髪がサラサラになるって」

「へえ……。そんなこと知ってるなんて女子力高いな」

そう言った後、志帆はまた髪を結び直す。そして立ち上がってまた踊り始めた。儚げで優しいオデットの踊りではない。オディールのものだと海斗はすぐにわかった。
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