オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。

 大地くんの口元に顔を近づけて嗅ぐと、顔を背けられた。


「酔っぱらいって面倒くさいイメージしかなかったけど。大地くんは、かわいいね」
「どこぞのオッサンと比べられるのも。いささか複雑だな」
「そんなつもりで言ったんじゃ、ないよ」
「シラフで帰って来たかったが。捕まった」

 一緒に飲んでたのって、先輩かな。
 それとも……。

「男だ」
「っ」
「女のいるような店では、なかった」
「そっか」
「たとえメンバーにワックがいても。店員が女でも。美香が心配するようなことは、なんねえよ」

 いつも曖昧な返事で不安にさせるのに、こんなときには、あたしの気持ちを汲み取って、不安をやわらげてくれるんだね。

「髪。暗くしたんだな」

 明るめミルクティーブラウンから、暗めのアッシュグレーに変えた。

「お店に立つのに派手すぎたらダメかなーって」
「そういう常識あるんだな」

 こういうアドバイスは若菜からしてもらったんだよね。ネイルのことも。

「それでも十分、目立つ色してるよな」
「そうかな。大地くんは毛染めしたことないの?」
「ない」
「黒が似合ってるよね。でも。金とか赤も似合いそう」
「ヤンキーか」
「学ラン似合いそう」
「さすがに厳しいだろ、もう」
「えー、絶対似合うよ。制服デートしよ?」
「……キツいな」
「宅コスでもいいよ」
「タクコス?」
「自宅コスプレ」
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