オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。

「しません」

 大地くんがソファから立ち上がるとコップに水を注いでくる。

「大地くんは。あたしのこと、見てないようで見てるよね」
「髪色くらい誰でも気づく」

 水をグビッと飲む大地くんの咽喉が上下する。

「手荒れだってそうじゃん」
「見てないわけ。ないだろ」

 アルコールのせい、なのかな。
 大地くんがいつもより甘い気がする。ほんの少し。

「お前もう風呂入って寝ろ」
「大地くんは?」
「下で飲んでくる」
「まだ飲むの?」
「山田さんは、俺が生まれる前からこの店に来てくれてる常連でな。いつか一緒に飲んでみたい、と。言われていた」
「……へえ」
「せっかくだから一杯やってくる」

 そういうこと、覚えてるんだ?

「帰ってないといいけどね。ていうか。それなら、先に飲んで来たらよかったのに」

 お風呂入る前に。こんなとこで、のんびりするより山田さんとこ行けばいいよね。

「真っ先にオッサンにかまっていいのかよ」
「え?」
「これでも俺は。美香との時間を大切にしたいと思ってる」
「……大地くん」
「じゃあな」
「言葉と行動が。伴って、ないよ」

 なんで、頭撫でてくれるの。
 幸せすぎる。

 やっぱり、今日の大地くんは、甘い!
 酔ってこうなるなら、じゃんじゃん飲ませたくなるなあ!?
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