オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。
「制服くらい、いいじゃん。ケチ。減るもんじゃないし。守秘義務あるのかな~って思って任務のことは、あんまり触れないようにしてるんだから。3秒あれば返事できる内容にスルーは薄情すぎでしょー!」
いちごオレの中身がなくなったことを揺らして確認すると、それをクシャっと潰してゴミ箱に投げたら外れた。
「相当ハマってるなぁ。とっとと付き合えば?」
投げやりなアドバイスしないでよ。
若菜は、どうせ付き合えないと思ってるんだよね。
空のいちごオレを拾ってゴミ箱に入れる。
「付け入る隙が。……ない」
会えない、話せない、メールが続かない。
「どこに惚れたの?」
「正直、なにがいいかわかんない」
顔がいい男なら他にもいるし。
たくさんワガママきいてくれて、甘やかせてくれる、優しくて包容力のある相手を新たに探す方が遥かにラクに違いない。
「合コン行く? テレビ局の人に、可愛い子集めてって言われてるんだけど」
「パス」
「じゃあ。医大生は」
「パス」
「いっそ自衛官呼んでみようか」
「大地くん来ないなら行かない」
「一途だねぇ。好きなんでしょ?」
「……さあ」
「ずっと考えてるよね。このところ、美香の口から"大地くん"の話しか聞いてない」
追いかける恋をしたことがない。
なにもしなくても、寄ってきてくれたから。
それがどうだ。
追いかけても追いかけても距離が縮まらない。