オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。

「……大地くん」
「ん?」
「今日は。よく、喋るね」

 あたしと結婚すること当然のように話してくれてるし。

 "愛しの妻"

 二人だとそんなこと言ってくれないもん!

「俺のこと信じられなくなったか」

 写真は――ショックだ。
 女の子と密着するようなシチュエーション、あって欲しくない。

 けれど、大地くんが仲間を放っておけるような人の方が悲しい。
 あたし知ってるよ。
 大地くんは見返りなく他人に優しくできる人だって。

「信じるよ」

 信じてるよ、大地くん。

「そのわりには泣きそうだな」
「えっ」

 ヤバイ涙が溢れそう。

「ちがう。これは。……コンタクトずれたの! トイレいってくる!」

 これ以上、ガキって思われたくない。

 駆け込んだトイレで気持ちを切り替えたあとパークに戻ると、大地くんが電話をしていた。
 普段携帯を使わない人だし、空気感と口調から、それが職場からの急な電話だと思った。
 こんなことは初めてだ。

 真剣な表情で電話を切ると、大地くんが、あたしをまっすぐに見つめる。

「わるい、呼び出された」

 …………!

「え、緊急事態。とか?」
「すまん」
< 128 / 201 >

この作品をシェア

pagetop