オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。

「辛くないんですか」
「まだ始まったばかりだよ。このくらいで折れてたら。続かないでしょ」

 辛い、というよりも。

「……心配」

 次に大地くんの元気な姿が見られるまで、落ち着かないだろう。

「あなたも少しは大人になったんですね」
「モトナリは、もっと子供らしくなりなさいよ」
「でも。ガキなんですよね、僕」

 よくわかんない子だよね。
 大人びているかと思ったら三歳児みたい。

「さっきの写真。最近のものですよ」

 女の子を支える大地くんを思いだし、ズキンと胸が痛む。

「だったらなに?」
「本当に、信じるんですか。あいつを」
「信じるよ」

 大地くんが、あたしを裏切るわけない。

「男なんだそうです」

 ――――?

「なんでも、宴会で。同僚が女装したとか」

 ……は? 女装?

「そして、その男の恋愛対象は。女だそうです」

 なにそれ。

「じゃあ、全部。モトナリの誤解?」
「美香さんだって誤解しましたよね」
「あんたが紛らわしい言い方するから!」
「先入観でした。僕としたことが」
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