オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。
「萌え……!?」
「かわいいヤツめ。おねーちゃんがランチをおごってやろう」
「僕が出しますよ」
「あたし、お給料まだもらってないんだけど。最終日に手渡しでくれるって海月さんが言ってくれたんだよね。初めてのバイト代は、モトナリに焼肉食べさせてあげる」
「なんで焼肉なんですか」
「食べ放題のお店があってね。すごく面白いから。ビックリするよ」
「あいつと行ったんですか」
「まーね」
「……あいつでなく。僕に使っていいんですか」
「そういえばモトナリに、姉らしいこと、してあげたことないなって」
風で髪が鼻にかかって、それを手でどけようとしたら、先にモトナリがあたしの髪をかき分ける。
「あなたは姉らしくなろうとした。それを僕が、拒んだ」
「……モトナリ」
「姉弟になんて。死んでもなりたくなくて。家を出ました」
モトナリが寮に入ったのは、あたしを避けたかったから?
「好きです。美香さん」
木陰でキラキラとした日差しを部分的に浴びるモトナリがあまりにも綺麗で、思わず息を呑む。
「諦めたくない」
「意外に、熱いんだね」
「何年あなたのこと想ってきたと……思ってるんですか」