オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。

 切なげに笑うモトナリに、胸がギュッと締め付けられる。

「美香さんを、口説くのは。もう少しいい男になってからにします」
「結婚するよ。大地くんと」
「わかんないじゃないですか。先のことなんて」
「わかるよ」
「僕だって美香さんのこと愛してるので譲りたくありません」
「……僕だって?」
「見てりゃわかります。アイツ。めちゃくちゃ美香さんのこと好きなんですね」

 ――――!

「ほんとは、わかってました。他に女なんていないって。遊びじゃなく真剣だって」
「……モトナリ」
「でも、あいつとまだキスもしてないんですよね?」
「す、するもん。もうすぐ」
「僕なら、いくらでもしてあげられるのに」
「エロガキ」
「うちに帰って僕に甘えてみませんか」
「姉弟でそういうことしないから」
「いつ男と女になってもかまいません」

 なんて厄介な弟だ。

「あたしにそういう気分になれるの?」
「そういう気分にしかなれません」

 やべえ。

「冬休み終わっても。……帰るのやめた方がいいかな」
「ダメですよ。帰ってきて下さい」
「モトナリは寮に戻るでしょ」
「戻ります」
「は?」
「ヘンな虫がつかないように。これからは、僕が見守ってます」

 あんたがその虫になるって可能性はないのかな。
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