オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。
「口だけは一人前だな」

 マキノが、肩をすくめる。

「家に連絡しないでね」
「保留しておこう」
「保留って……」

 ふと、マキノが片手に持つビニール袋にコンビニ弁当が入っていることに気づく。

「マキノ、ほんとに自分のこと自分でできてるの?」
「あ?」
「そんなんばっか食べてたら栄養片寄るんじゃない」
「うめーよ、意外に」
「あたしのおかず。分けてあげよーか」
「シェフが作ってくれんのか? お前んとこの」
「あたしの手作りだけど」

 マキノが、目を見開く。

「なんだそれ。食えんのか?」
「……マキノ、そんなんだから結婚できないんだよ」

 手作り弁当に対して『食べられるか』って最低の質問すぎる。

「なんとでも」
「いいひといないの?」
「俺の話はいい」
「自分の身なりもきちんとできないのに、人のことどうこう言わないで欲しい」

 髭くらい剃ってこい。

「そうだな」

 ゲンコツでもくらわされるかと思ったが、ぽつりとつぶやくと、マキノは諦めたように去っていった。
 なに、いまの。
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