オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。
【震度七】 【死傷者】
「……っ、これ。ゴミじゃ、ないよね」
「いらねーよ」
「でも」
この地震で……マキノの……。
「誰かに。なんか聞いたか」
「ごめん」
「それで来たのか」
「ごめんなさい。無神経なこと、言った」
「お前が無神経なのは。いつものことだろ。どうでもいいよ」
「どうでもよくない。あたし。マキノに酷いこと、言ったもん」
「で?」
「……え?」
「慰めにきてくれたわけ」
マキノが、こっちに近づいてくる。
「どうして、アイツなんだよって。他に、どうでもいいような連中いるだろうって。神様がいるとしたら。呪いたい」
生気を失ったような目が強い拒絶を放ちながらも距離はどんどん狭まる。
「今も。入院してる」
マキノの奥さん?
「そんなに。……状態」
よくないの、かな。
「カラダの方は回復してきた。つっても、車椅子なきゃ暮らせないがな」
もしかして。……心が?
「もうじき顔みられるってときだった」
「っ」
「俺は、絶望しながらも、アイツの命だけでも助かったことが嬉しかった。だけどアイツは。……そうは思っていない」