オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。
なに、考えてんの。
「男、舐めてたら。ろくな目に合わねえよ」
「……舐めてないし」
「お前の好きな男ってのは信じられるのか」
「信じるよ」
「そうか」
数秒間見つめ合ったあと、マキノの手から、力が抜けていく。
「マキノは自衛官がキライなの?」
「いいや」
「じゃあ。好き?」
「まったく」
「……地震のことが関係してる?」
「お前に話すことはない」
「マキノは、あたしの進路に口出ししてくるクセに」
「担任として。最低限の範囲でな」
なにがあったかなんて、わからないし。
踏み込むことでもないのかもしれない。
でも、これだけは、わかる。
「マキノは自分が赦せないの?」
――――救えなかった。
愛する人を。我が子を。
神様の前で一生守ると誓ったのかも、しれない。
家族になった女性を。
「生意気だな。お前」
「マキノだって十分生意気だから」
「嫌いじゃない」
「え?」
「彼らは身を粉にして働いている。過酷な環境下で通常通り動けるような訓練を受け。雨が降っていても、傘も、させないんだそうだ。だけど、人間だ。神様じゃない」
こんなとき、なんて言葉をかければいいんだろう。
きっと正解なんてない。