オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。

「ありがとうございました!」
「いえ」
「えー。もっとのりたかった」
「こら、トウゴ。もうママから離れちゃいけないからね!」

 あんなにママが恋しそうだったのに、大地くんから離れたくない様子だ。

「ぼく。ひとりでできたよ」
「え?」
「おしっこ。できたよ」
「……っ、そうなの?」
「おにいちゃんに、なったから。ママとカンナちゃんまもるんだ。グリーンとやくそくした」

 トウゴくんママは、深々と頭をさげてトウゴくんとカンナちゃんと去っていった。

 ありがとう、か。
 助けたのは大地くんで、あたしは特になにもしていないけど。……困ってる人に感謝されるって悪い気しないなあ。

「一件落着。だね?」
「はい」

 だから、なんであたしには敬語なのよ。
 あの子には自分から話しかけて、会話のキャッチボールが成立していたのにさ。
 うう、五歳の男の子に嫉妬しそう。

「えーと。さっきの続きから、まわる?」
「そうしましょうか」
「なに見てたっけ」
「チンアナゴですね」
「は? なにそれ」
「こっちです」

 ……まあ、いっか。 
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