オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。
「ほう。ひったくり犯を秒殺か」
「殺してはないけどね」

 週明けの月曜日。
 あたしが引ったくりにあったことはクラスメイトだけでなく学校中の噂になっていた。
 厳密に言うと、【うちの高校の生徒】が被害者だと広まった。朝礼で校長先生から全校生徒に注意喚起があったからだ。

「見たよー、SNS。撃退の瞬間」

 なんでもネットにあげるのってどうなのかな。

「財布にいくら入ってたの?」
「10万くらいかな」
「戻ってきてよかったね。それに。怪我なくて、なにより」
「……うん。でも。財布より」
「ん?」
「ううん。なんでもない」

 あたしのバッグを奪った犯人が半泣きで許しを乞う映像が拡散されてるんだそうだ。
 犯人は十代、そのうち一人は中学生だったとか。これに懲りたら二度と悪いコトしないことだね。

「で。腰を抜かした美香(みか)を、交番まで支えて連れてってくれたんだ?」
「うん」
「どんな男? 映像には顔出てなかったけど。体格よさげだったよね」

 すごく引き締まっていたと、思う。
 同年代――男子高校生とは全然ちがうなぁって感じの。あたしの知る限り、誰よりもいいカラダしてたかな。
 うちのパパ、お腹出てるし。
 使用人はヒョロガリだし。

「んー……。カタブツ?」

 女を知らなさそうな感じ。
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