オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。

 初めての経験に、ドキドキする。

 外を眺めると、となりのゴンドラが、結構近くにあることに気づく。そっちも男女が乗り込んでいるが、カップルのようだ。
 なんだろう。
 ……とても仲良さげ。
 寒いのか、くっついて、一緒に上着かけてる。ラブラブって感じ。

 あれ。
 どうしてあたしたち向かい合ってるの!?

 二者面談みたくなってるよ。
 先に乗り込まされたのあたしだけど、しれっと離れて座ったよね。
 となりには座らないの?
 今すぐ大地くんの横に移動したいけれど見えない壁を感じる。

 いや、近づくものか。
 どうしてこんなことするの。

 また想い出が一つ増えちゃったじゃん。
 忘れなきゃいけないのに。全部。

「悪かった」

 ……え?

「期待させるようなことして、突き放した」

 そうだよ。
 大地くんは、けっこう、あたしに期待させてる。
 拒絶するなら、最初からしてよ。
 中途半端に、かまわないでよ。

「単純に。喜んで欲しかった」
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