オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。
「一つ。聞いてみたいことがあった」
「……なに」
初めてだね、大地くんからあたしになにか聞いてくれるのは。
「あのとき。君は、心底。安堵の表情を浮かべていた」
それが、バッグが手元に返ってきたときのことだとすぐにわかった。
「貴重品が返ってきた、というよりは。別の、大切な"なにか"がそこにあったのかと。だとすれば、それは、どんなものなのか。ずっと引っかかっていた」
財布やクレカ、スマホよりも亡くしたくなかったものがある。
「いや、いいんだ。答えたくないなら、答えなくても――」
「写真」
「……写真?」
「うん。ママとあたしの、写真」