オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。

 手帳に、挟んでいた。
 どれだけ大金をはたいても、もう二度と買えないもの。

「死んじゃったの。病気で、あたしが小学生のときに」
「そうだったのか」
「パパは、ママのものをほとんど家に残さなかった。新しい奥さんのために」
「再婚したのか」
「うん。ていうか。愛人ってやつ」

 そもそもにパパとママは、終わってたんだ。
 それでもママは。
 あたしのママは、世界に一人だけ。

「あのときは。ほんとに、ありがと」

 大地くんは、あれがあたしじゃなくても助けただろう。
 誰にでも平等に優しいひとだから。

 大地くんがあたしの特別だっただけ。
 あたしが大地くんの特別だったことなんて、ないんだ。
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