オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。
「寂しいのか」
――――サミシイ
「だから、男で埋めてきた」
否定できない。
あたしにとって男は、気まぐれで過ごす相手にすぎなかったのかもしれない。
恋が続かないんじゃなくて、恋が始まっていなかった。
大地くんがどうしてそんなことを見抜いているのかわからないけれど、あたしの大地くんへの気持ちを、これまでの男に対してのそれと同じにしないで欲しい。
あなたのことは失いたくないと思う。
「あの夜。親子ほど年が離れた男と歩いていたな」
…………!
「見てたの?」
「偶然な」
大地くんと出逢った日、あたしがデートしていたのは医者だった。
待ち合わせしたのは、夜。
彼が予約したレストランで食事したあと朝まで一緒の予定だったのに、急患が入ったからと、タクシー代を渡された。
「仕事でドタキャンされたの」
交通費にしては多すぎるお金は、あたしへのお詫びであり、エサであり、鎖でもあったのかもしれない。
そのあと、ひったくりにあった。
バッグも財布もお金も、全てプレゼントされたもの。
うちに帰れば腐るほどある。
ただし宝物は二度と手に入れられなくて。
大地くんが、取り返してくれた。
「他に女がいる」