オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。

「もしかして。説教しに来た?」

 なんにも知らないあたしが滑稽だった?
 バカなあたしに同情した?
 見ていて危ないから気にかけて繋ぎ止めようとした?

「かもな」
「余計なお世話。あたしがどんな目にあおうが、あたしの自業自得でしょ」

 保護者でもないのに口を挟まないで。

「そっか。奥さんいるんだ。なのに裏では子供でもおかしくない年の女の子と戯れてるとか。……笑える」
「強がらなくていい」
「別に。あたしだって年を誤魔化して甘い汁を吸ってた。被害者ぶったりしないよ」

 大地くんは警察じゃないから、クズなオトナを捕まえる義務も非行少女を保護する義務もない。

「大地くんが守るのは、愛されてない少女じゃない。この国でしょ」

 これ以上あたしにかまわなくて、いいよ。
< 48 / 201 >

この作品をシェア

pagetop