オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。
#05 お泊まり
#04 お泊まり
「いらっしゃーい」
入ったのは、どうみても初デートのシメに選ぶ店ではない。
あたしみたいな高校生は来なさそうな、地元のオジサンが仕事帰りに通う雰囲気の食堂。
というか居酒屋……?
カウンターから女性が声をかけてくる。
「って、え、大地?」
――――!
「あんたねえ。全然連絡よこさない……で」
どうやら大地くんの知り合いのようだ。
それも名前を呼び捨てにするくらいには親しいらしい。
エプロン姿の女性が、あたしを、まじまじと見る。
「誰」
こっちの台詞ですけど。
「まさか。大地の、カノジョ?」
か、彼女じゃないです。でも。
未来ではそうなっているといいなと思います。
「えーと。大学生?」
「いや高校生」
「は?」
「今日。コイツ泊めてやるから」
――"泊めてやる"
「美香。こっち」