オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。

「そんなでけえ弟いんのか」
「言ったよね。後妻は愛人だったって」
「つーことは。なんだ。……隠し子か」
「あたしと違って優秀な子だから、期待もされてる。会社のことは弟に任せておけばいいよ」

 好きなだけお金が使える生活よりも、会いたいときに会えてワガママきいてくれる旦那さんよりも、大地くんのいる未来が欲しい。

「あたしはお嬢様なんて。いつやめてもいい」

 数秒間見つめあったあと、大地くんに頭にポンと手を乗せられる。

「まあ。しっかり考えろ」
「考えてもこたえは変わらないよ」
「それでもすぐに決めることじゃない」
「……好きって。言って」

 遠回しじゃない愛の言葉が欲しいよ。

「大地くん」
「言えない」
「どうして」
「わるい」

 なんで言ってくれないの。

「……バカ。もういい。出てけ!」
「おいおい。ここは俺の育った家だぞ」
「大地くんなんて知らない!」

 洗面所から追い出そうと、大地くんの背中を押す。

「大きな声だすな」
「ふ、」

 腕を引かれ、抱き寄せられる。

「10秒な」
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