オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。
「いやー。まさか。弟が犯罪者になるとは」
「なってねえよ」
お店の仕事を終えた海月さんが、二階の居間にあがってくる。
「あたしが来るまでのあいだ。なにしてたんだか」
うしろに縛っていたヘアゴムを外す海月さんは、さらさらの黒髪美人だ。
こんな人が親代わりをしてくれていたら思春期の大地くんはドキドキして仕方なかったんじゃないの、と。
ついゲスなことを考えてしまう。
「大事な話」
「ふーん」
「なんだよ」
海月さんの前での大地くんは、ちょっと子供っぽい。本物の姉弟みたい。
「やっと顔見せたと思ったら、JKのカノジョ連れてくるとは」
「付き合っていない」
そんなにハッキリ言わなくても。
「だけどデートしてきたんでしょ?」
「……まあ」
そこは否定しないんだ。
「泊めるって? 親御さんの許可は?」
「とってない」
「ちょっとぉ。ロミオとジュリエットごっこ?」
「ちげえよ」
大地くんが神妙な顔つきになる。
「これから先。一人で飯を食いたくないとき。ここに来ればいい」
――――!
「というよりは、理由なんてなくていい。いつでも来い。金はいらない。俺につけとけ。ここなら、どんなワガママいっても通用する」