オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。
大地くんは、あたしのどこが好きなんだろう。
「……まさか。胸なんじゃ」
「んー? どうかした?」
「いえ。なんでも」
それにしても、料理を始めてから手荒れするようになった。
最高級ハンドクリーム塗ってるのに。
眠るときは手袋した方がいい……?
「美香ちゃーん。会いたくて今日も来ちゃったよ」
のれんをくぐってきたのは、中年のサラリーマン。
「こんばんは、山田さん」
昨日も来てくれた。
「嬉しいな。名前覚えてくれてるんだ」
「すっかり看板娘ね」
山田さんから鞄をあずかり、カウンターの椅子を引く。
「うちの息子の嫁に欲しい。いや。俺が嫁にしたい」
「あは。なに言ってるんですか」
「ほんとなに言ってんすか」
――――!
「大地くん。久しぶりだね。覚えてるかい?」
「もちろんですよ。いつもありがとうございます、山田さん」
大地くんだ。
大地くんが、帰ってきた。