わかりきったことだけを、




上半身をおこしベッドの上で手を広げる。つられて顔を上げた志葉が「もー…」と、いつものようにあきれた声を出した。


「智咲くん」

「…なーに、ゆらのちゃん」

「仲直りのはぐしよう」

「…今度はデレの方?」

「そう。貴重だよ」



志葉の顔が赤くなった。
…ふ、照れてんの、かわいい。


ツンデレは志葉といる時だけは認めてあげることにしているーーというか、そもそも志葉以外にはツンの方すら見せていないけど。ずっと“無駄美人”のまま認識されている。

志葉だけが、私の全部を知っている。




「…悪い女」

「智咲くんにだけ」

「名前呼びも、…まじ、急にするからビビるじゃん」

「智咲」

「うへぇ、呼び捨て、泣ける」



広げた両手に、飛び込むようにして志葉が抱き着いてくる。あまりにも勢いがありすぎてそのままベッドに倒れこんでしまった。

志葉が私に覆いかぶさるような形。

彼はベッドに手をつけて自分の身体を支えているので体重はかかっていない。志葉のネクタイが揺れている。



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