わかりきったことだけを、




赤い耳、揺れるネクタイ、ベッドにて。




「……なーんか、えっちだなぁ」

「わかる」

「これってそういう雰囲気?」

「うん、そんな気がする」

「へえ、そっかぁ」

「ロマンじゃん?」

「私も制服に着替えようかな」

「パジャマはパジャマでそそるよ。そのままでいい」

「うわー」

「俺も男だから、ね」



ちゅ、と、不意打ちでキスを落とされる。触れるだけの優しいそれだけど、志葉を感じるには十分だ。一度唇を離すと、志葉は「あー…」と声を洩らし身体を少しだけ離した。


志葉の瞳に躊躇いの色が見える。

迷ってるのだろう。これからの展開への緊張と欲望で葛藤してる。迷わなくていいのに。
熱はまだ引いてない。大丈夫、言い訳はもう揃ってるんだよ、志葉。


グイっと彼のネクタイを引っ張って顔を近づける。志葉がぐっと下唇を噛んだ。




「やめないで、志葉」

「…簡単に言うな、…浅岡はわかってない」

「わからなくていいよ。志葉の'男の事情'なんて、私は知らない」

「…わがまま」

「知ってるくせに」

「も―…しらないからね、浅岡」

「うん、志葉」



志葉智咲は、甘すぎる。

柔らかな笑みもキスも、まだ知らない感覚も、全部私だけのものになるんだ。
その事実が嬉しくてどうしようもないくらい心地よい。




────浅岡のぜんぶ、俺がもらうから、



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