わかりきったことだけを、
2.「俺のことみて」
「志葉ぁ」
「なに」
「暑いよぉ、アイス食べたいよぉ、太陽がうるさいよぉ」
「俺からしたら浅岡の方がうるさいんだけど」
「ええ、好きな子には優しくしようよ志葉くん」
「お前なぁ、俺の好意をネタにすんの辞めろよいい加減」
「はっはあ、照れてるのかな志葉少年よ」
「流石にもう慣れた。いいから早く解けよ浅岡少女」
夏は高校生が輝きを増すのよね、と、夢見がちな私のお母さんが言っていた。
そうだとするならば、私と彼はどうだろう。
放課後、夏、2人きり。
扇風機の音と私の嘆き声、そして志葉の呆れたため息が行き交う教室で、今日も今日とてよく分からない数式を解かされているこの状況は、果たして輝いていると言えるだろうか。
「浅岡」
「なにー…」
「ポニーテール似合ってるね」
最近少しだけ髪が短くなった志葉が言った。