わかりきったことだけを、
開始から1時間。
時々羽瀬くんの毒舌を浴びながらもなんとかテスト範囲のワークを進めていた時、机の上に置かれていた志葉のスマホが鳴った。
「え、母さんだ。なんだろ、ごめん、ちょっと電話してくる」
「うん」
そう言った志葉が立ち上がり部屋を出る。
志葉の部屋なんだしここで電話していても別に気にはならないけれど、勉強している私たちに気を使ってくれたのだろう。
志葉のいなくなった部屋で、羽瀬くんと二人。
私のことをよく思っていないとはいえ、今もこうやって勉強を教えてくれている。
「わかんなくなったらすぐ言ってください」と志葉のようなことも言うし、やっぱり彼は悪い人ではなさそうなんだよなぁ。
顔も整っているし、背も志葉より少し低いくらいで、一般的にはかなりある方だと思う。
志葉の家計はみんなイケメン属性なのか。
…なんて考えていると。
「…なんですか」
黙々とシャープペンを走らせて自分のテストに向けて勉強していた羽瀬くんが、ふとペンを置いてこちらを見た。