わかりきったことだけを、
全然、知らなかった。
『どこが好きなの?』
『ああ、うーん、その子さ、手がすごい綺麗で』
『手?』
『ペンだことか全然なくて』
『勉強してないってことじゃん』
『うん、けど、ペンの持ち方すげー綺麗で、惚れた』
『…意味わかんねー、』
ホント、志葉って私よりずっとずっと変人だ。
だけど嫌いじゃない。むしろ好き。ありきたりじゃない恋はロマンだ。
「留年、しないでくださいね。同じ教室で授業受けるとか絶対嫌ですよ俺」
「うわぁ、それ私もいやだなぁ」
「じゃあ早くペン動かしてくださいよ。何だらだら話してるんですか」
「ええ…主に羽瀬くんが話してたじゃん…」
「ごめん2人とも、電話長引いて──…って、なに、仲良くなったの?」
「なってない」
「ええ!なったじゃん!」
私と志葉が恋をしたのは、やっぱり運命ってやつなのかもしれないね。
――ねえ、志葉はどう思う?