わかりきったことだけを、
11.「多分、俺も変」
「志葉」
「なに?浅岡」
「私のペンの持ち方に惚れたって本当?」
「は……、」
「智咲くん」
「…ん、うー、えーっと、」
これは緊急事態だ。
浅岡がにやにやしている。
どうして、なんで、浅岡がそのことを知っているのだろうか。
俺言った?…いや、絶対言ってない。
このことを知っているのは確か───……
「言質は羽瀬くんにとってあるよ」
…そうだ、京也だ。
何言ってくれてんだ勝手に。
」言うなよ」ってくぎを刺しておけばよかった。
浅岡にはもう少し先に、――というか、何なら節目の時まで言わないつもりだったんだ。
記念日とか誕生日とか、とにかく特別な日に振り返って「あの時ホントはこうだったんだよ」って。
…そのほうがロマンかなって思ってたから。
くそ、ホント、いろいろ狂った。
とはいえ、もう手遅れなことには変わりないのだ。
にやにやする浅岡の頬をつまむと、彼女は「んぇ、」とよくわからない声をあげた。