わかりきったことだけを、
「…ごめんよ志葉くん……」
「なんか謝られるとそれはそれで虚しい」
「ひぇ、ごめん、ほんと。許して欲しいです」
顔を上げ、もう一度、「ごめん」と彼に伝える。
視界に入れた志葉の顔が心做しか赤いような気がした。
「…あとその上目遣い、やめて」
「え?」
「無駄に顔だけは良いって自覚してるなら尚更、その破壊力に気づいた方がいいよ浅岡。俺もそろそろ爆発して死ぬかもしれない」
「私が可愛いから困ってるの?」
「そう。だからやめて、俺の顔見んな」
「…だせーじゃん俺」と呟いた志葉が、顔を隠すように机に突っ伏した。
サラサラの黒髪に覆われた後頭部。
少しだけ刈り上げられたうなじ。
隙間から見える、少しだけ赤い耳。
……触ったら怒られるかな。
いや、絶対怒られるよね。
私、さっき髪の毛触るのもダメって言っちゃったし。
「俺はダメで浅岡はいいの?」って言われるよね、きっと。
って、ちゃんと分かってるけど、でも。
志葉の髪の毛は見るからにサラサラで、どんな手触りなんだろうって気になってしまう。
赤い耳はどれだけの熱を帯びているのか感じたい。
私の少しの好奇心が、志葉に触れたがっている。